気象衛星NOAA用 受信アンテナの製作(QFHアンテナ 1)

 

<QFHアンテナの特徴>

このQFH(QuadriFilar Helicoidal)アンテナは、無指向性で偏波面の変化が激しい電波には、シグナルの急な落ち込みが少ないといった特徴を持っています。特に、NOAA(低軌道気象衛星)のような移動体の電波を受信するような場合、地面より上半球を全方位に渡ってムラ無くカバーし、且つ電波面の偏移に強いので普通の受信用GPと比べて、その威力は絶大です。(NOAAは衛星本体から見て右旋円偏波※です)製作に掛かる時間やコストですが、おおよそ半日くらいで小遣い程度(2〜3千円)の費用で出来ます。特別な調整も必要ありませんので、ケーブルを繋げば運用可能です。もし興味があれば、すぐ下の周波数帯エアバンド周辺(118MHz〜136MHz)にマッチングさせて、航空管制やACARSのような航空機と地上とで行う無線データ通信を受信する場合も、良好のようです。

昨今はWebや書籍にも製作記事が掲載され、私も最初はそれらを参考に製作しました。各々「形・格好は同じでも使う部材や寸法のとり方、また給電部の作り方が違い、実際に作ってみないと結果は判りません。自身も記事通りの材質を使い、寸法通りにいくつか作りましたが、モノによっては衛星の仰角によって極端に電波が弱くなってしまい、フェージングによるノイズまじりの画像で期待するほど良い結果は得られませんでした。資金・時間に余裕があれば、クロス八木と仰角ローターを組み合わせて衛星を自動追尾させる方法もありますが過剰な設備です。綺麗な電送写真を受かるようにする為には、地表から頭上までどの仰角・方角からも強い信号で平均して安定する必要があります。8度以下の仰角では利得は期待できませんがQFHを作ってみます。

※場所を固定して進行方向を見たとき、時間が進むと右回りに電界と磁界が回転する偏波を右旋円偏波「right-hand circularly polarized (RHCP)」と言う。

●設計

QFHアンテナの設計には、下記のサイトを利用します。
http://www.jcoppens.com/ant/qfh/calc.en.php

このページの空欄に、各々数値を入力して「Calculate」ボタンを押せば自動計算されます。入力する必須項目は、@周波数、Aエレメントの太さ、B折り曲げ半径、C幅と高さの比率 の4つです。

@希望する受信周波数帯の中心を決めます。 NOAA衛星を受信するならデフォルトの「137.5MHz」でOKです。
A使用するエレメントの直径(mm)を入力します。 この直径が変わると、全長も変わります。(適当だと共振点がズレます)
B太さのあるエレメントを直角に曲げる事は、物理的に不可能ですので曲げに必要な余長分として半径R(mm)を入力します。
C幅と高さの比率を変えると、主に垂直(Z軸方向)の利得パターンに影響します。通常は「0.44」で問題ありませんが、低い角度(地平線)で利得を得たい場合は0.3〜0.4の範囲で比率を変えます。(10〜60度付近の利得が変化します)

他の項目に、エレメントをひねる回数の選択があります。通常、半回転(180度)の係数「0.5」が一般的のようですので数値を変える必要はありません。
ページ中ほどに、「エレメントの太さ」と「パイプ直径」をミリ単位で入力する欄があります。これを使うと穴あけ位置を示した治具をPDFで自動生成してくれます。原寸大にプリントアウトしてパイプに切り貼りすれば、中心もしっかり取れるので穴あけに便利です。

●準備

今回、使用する材料は下記の通りです。基本的な知識があると仮定して、部材に制限はありませんので、各人必要に併せて必要なものを調達して下さい。
特殊な工具は必要ありません。電子工作を行う程度の道具があれば作れます。

アルミ線・・・・・・・・・・太さ3.5Φ 長さ4mほど。銅線ならもう少し細いほうが加工しやすい。
塩ビパイプ・・・・・・・・VP25(VP20程度が軽くてFB! 但し給電部の半田付けは面倒)
塩ビキャップ・・・・・・エポキシ系樹脂やボンドでで埋めてしまうようなら必要なし。
硬質樹脂パイプ・・・・エレメント中間部の支持に使用。金属以外なら何でもOK。
圧着端子・・・・・・・・・アルミ線の太さがしっかり圧着できるサイズ。給電部に使用。
同軸ケーブル・・・・・5D-2V(50Ω)
同軸コネクタ・・・・・・途中にプリアンプの設置があれば、必要な数だけ手配して下さい。
束線バンド・・・・・・・・同軸ケーブルやバランの押さえに使用。

ドリル(ルーター等)・・エレメントの太さと同じサイズの穴をあけられる程度のドリル。
ペンチやニッパー・・・切ったり曲げたり、必須です。
糸のこぎり・・・・・・・・・パイプの切断に。
カッター・・・・・・・・・・・同軸ケーブルの被覆処理など
ホットボンド・・・・・・・・あると重宝。給電部を固めたり、防水に埋め栓として使ったり。

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